友人との共同経営で大失敗した代表取締役の体験談

友人同士での共同経営で失敗

インターネット関連の会社を経営されている社長に友人と共同経営をして大失敗した時の貴重なお話を聴かせていただきました。友人と共同経営する事になったキッカケやどうして失敗に終わったのかなど経営の難しさがよく分かりました。これから起業や独立をしたとお考えの方に参考になります。

最初は乗り気じゃなかった法人化と共同経営

何のお仕事の会社をされていましたか?

主な仕事内容としてはインターネットとかウェブに関する集客に関する仕事です。SEO対策とかリスティングとか、おまけ的な要素としてアフィリエイト的なものとか、そういったウェブ上での集客を全体的な仕事としてやっていました。

正直最初に法人化した時は個人事業という形で、友人と一緒にウェブの集客をやっていたんですけども、当時はSEO対策がすごく得意だったという事もあって、自分達でそういったものを上げられるようになりますと色々とやりようが増えてきました。

その中で仕事がうまくいって収益が伸びてきたので、友人が法人化してもっと仕事の幅を広げてやりたい、自分達が法人化して今の会社と取引していったらもっとすごい事が出来ると言い出しました。

友人は法人化に乗り気だったのですが、僕は経営に正直興味がありませんでした。その当時はマンションの1室で小さくやっていました。

お客さんは少ないながらも特に食うには困らない程度の収益もあったので、このまま自由な時間でやっていた方がいいなと思ったんですけども、友人の熱心な説得に自分も何となく意識が変わってきて「じゃあやろうか」という話になりました。

それでどっちが社長になるかという話になって、僕が先にネットビジネスを始めていたという事もあり、僕に代表をやって欲しいという話になりました。

正直経営者としての責任を負うのは嫌でしたし細々とひっそりやっていくのが好きだったのですが、そう言われると仕方が無かったので、僕が代表でその友人が取締役というツートップでの共同経営で最初の仕事をスタートしました。

起業時に特に契約を交わしたりはしていません。

当時はそれこそ学生時代、プータローの時代からずっと苦楽を共にしてきたという長い付き合いがありまして、お互い隠し事は無いというぐらい友人を信用していたし、面倒でもあったので、契約書の類は一切交わしていませんでした。

こんな言い方をしたらダメなんでしょうけど、当時僕は経営に全く興味が無く、友人に引っ張られる形でスタートした事もありまして、彼の言うがままにやりました。

そこで選んだのが、株の配分は50%、50%という感じですね。2人の会社だから半分ずつと言う訳です。

実はこれが1番やってはいけない事だと後々分かってくるのですが、その時は何の違和感も無くそういうものなんだろうなという事で、50%、50%にしました。

実際に起業した当初は、それまでに作った財産の部分が結構大きかったです。

起業前は自分と友人の他、2人アルバイトとして手伝ってくれていた人の4人でマンションの1室でやっているだけだったので、殆ど経費とかもかかっていない状態だったんです。

でも起業した事で、調子に乗っていたというのは何ですが大きく攻めようと気合を入れている時期だったので、きちんとしたオフィスを借りました。

田舎だったので家賃とかは安かったのですが、それでも月に20万円ほど出費する事になりました。さらに人を増やそうと思ってアルバイトやパートを雇ったりしていましたので、さらに経費は膨らんでいきました。

はっきり言って、事業を拡大すれば収益も今の何倍にもなるはずだという風に勝手に妄想していた部分が大きかったんです。

しかし実際に蓋を開けてみたら質問攻めの毎日で、対応するのに精一杯でドタバタしていました。アルバイトさんも最初から、仕事が出来る訳ではないので、質問は増える一方だし、トラブルが続発して大変でした。

後はアルバイトの面接なんですが、より優秀な人を選べるからよりたくさん来てくれた方がいいと考えていまして、とにかく募集をかけていました。

そのため面接の回数も多くなっていったのですが、仕事の時間帯的にお昼だけの業務も可という事で、主婦の方の応募も非常に多かったです。

そうなってくると逆に選ぶのが大変になってきまして、それでも何とか10人ぐらい雇ったのですが、その内の3人ぐらいが妊娠や転勤を理由にすぐに辞めていってしまった時は、せっかく選んだのにと思って結構ショックでした。

どの会社でも通る道だと思うのですが、株式にすると、それまでは自分の仕事の事だけ考えていればよかったのが、経営者になった途端に色々なお付き合いが増えたりします。

よく分からない書類、必要な書類なんでしょうけど社会保険とかのたくさんの書類を書かなければならなくなりました。

税金の事とか月の経費の管理といった事務処理に追われる事が多くなって、自分がこういう事をやりたいと思っている事が何も出来なくなって、日々ストレスが溜っていきました。

結局実際会社で1番能力の高い2人、僕と友人の事ですが、今まで2人で売上を上げてきたから、当然その2人が会社の中で1番仕事が出来る訳なんです。

その2人が事務処理の方にばっかり追われる羽目になって、売上をすごく落とす事になってしまいました。

売り上げが下がると同時にトラブルも頻発

共同経営ならではのトラブルはありましたか?

トラブルは最初の方、要するに売上のいい時は無かったです。売上がいい時は、お互いこれからいけるんじゃないかなと考えていたので、特に何もありませんでした。

うちの会社はSEOという1つの部分が得意だったので、そこに特化していたというか依存していた部分が大きかったものですから、それが仕組みの変化によってある日突然売上が急落したんです。

正直SEOにかこつけてまともな経営もやっていなくて、ダイエットジムに通ったりとか経営と関係の無い事とかをやったりしていた事も重なって、売上が激減しました。

それからはもうトラブルが頻発するようになりました。

どちらかというと僕も友人も言い合いをするタイプではなくて、遠慮しがちで気を遣い合っていたのですが、結局何かを決めなければいけない局面で中々決断が出来ず、お互いの意見が食い違う事も多くなっていきました。

そういった事から、どちらかと言うと僕等が周りの社員の方に迷惑をかけるようになって、僕等への不満を募らせていったのです。そのため人間関係のトラブルが続発するようになりました。

会社はトラブルが続いていました。そして僕等2人も、口には出さないのですが、お互いに相手への不満が募っていたはずなんです。少なくとも僕はそうでしたし、彼も間違いなくそうだったと思います。

最初の内は一緒に食事をしたりとか付き合いはあったのですが、営業とかに奔走していたので、そういった事も無くなりました。

落ち込んだ売上を取り戻す事には成功したものの、もう無理だなっていう気持ちはずっと感じていました。

売上が落ちたのはその時の夏で、それから何とか売上を上げる為に営業に奔走し、その年の冬、うちの決算が12月なんですけど1番切りがいいなという事で、その時に辞めようと決めました。

その間も経営の事で色々な方に相談していたのですが、結局「船頭多くして船進まず」と例え話をされてお叱りを受ける事も多かったんですけど、正にその通りだなと思いました。

そもそも共同経営という事で、実際にその事で苦労してばかりでした。自分が思い付いた事でも友人の許可を得ないと出来ないし、彼の方もそうだったので、1個1個やる事にすごく手間がかかって遅くなってしまうんです。

そういう事でお互い気を遣い合うのも無理だし、友人関係もこのままじゃ破綻してしまうという事で、冬ぐらいに何かの件で電話していた時に思い余ってそのまま辞めたいと言ってしまいました。

思い余ってというか、もう言いたくて仕方が無かったという感じでした。そこから2~3時間電話で話し合って、お互いもう無理だなと悟って、辞める事を決意しました。

共同経営を辞めるための作業が大変

辞める時に揉めたりはしませんでしたか。

お互い気を遣う性格ですから、正直辞める事自体で揉めたりはしませんでした。しかし半々に分けていた会社の株式をどう分けるのかといった資産の話し合いでは、何度も揉めました。

最初の方は毎日のように話し合っていました。とにかく決めていく事が多かったので、1つ1つ決めていくしかなかったんです。

そして資産を初めとした色々なものを分ける話になったのですが、僕等がそういった経験が無かったので、どこを資産として見ていけばいいのかとかどう分けていったらいいのかとか、分からない事が多くてしんどかったです。

それをやっていた1~2ヶ月ぐらいは本当に仕事にならなくて、辞める為のシナリオを作るのには苦労しました。

揉めるという事は無かったんですけど、とにかく分からない事だらけで、お互いかなりイラついていたとは思います。

揉めた時は色んな方に相談しました。1番相談したのは税理士の方でした。うちの税理士の方はお金だけじゃなくて経営の方も強い方だったので、状況に応じた対応について色々な相談をしました。

後は7~8年ぐらい前からの知り合いの方がいまして、その方が長い間経営をされていましたので、久しぶりに会いに行って、その時の状況を全て話して相談をしました。

その人も、共同経営ではないですけども会社を売ったりとかした経験をお持ちだった事から、僕達の状況もイメージが付くみたいで、その方の話もとても参考になりました。

こうして大体やるべき事が決まってきて本格的に動こうかなと思った時に、色々なものを分けるという難しい事が出てきました。

その中で特に困ったのは、うちの会社で作成したHPといいますか、自社メディアというものを保有していたんですけども、それを分けるというのが中々難しかったです。

自社メディアも資産扱いなので、それをどういう風に分ければいいのか、例えば1000個あるなら500個ずつ分けるのかそれとも1000個全て共同保有するのかとか、それをどうしたらいいのか分からなかったのです。

それはかなり特殊なケースで普通では中々無い事なのですが、それを相談するのに最初は税理士の方から地元鈴鹿市の弁護士を紹介してもらったんですけど、そういうのをやった事が無いから分からないという感じで断られました。

その時に初めて知ったのですが、弁護士というのはそれぞれ得意分野があって、オールマイティに相談できる訳じゃないんだなという事が分かりました。

それでそういった分野に精通している弁護士の方を、弁護士をやっている友人のお父さんに紹介してもらえないかと話を持ちかけたら、そのお父さんが紹介して下さいました。

言わば弁護士さんが紹介してくれた弁護士さんという形ですね。その方に相談して、そういった悩みは解決していきました。

相談費用は、それほどすごい訳ではありませんが、結構かかりました。僕等の担当弁護士さんは高くて、普通は30分の相談で5千円ぐらいなんですけど、その方は30分で1万円ぐらいと倍の値段でした。

最初はこれで1万円も取られるのかとすごく不満でした。よく初回相談は無料という弁護士もいるのですが、その方は初回でも1万円取りました。

しかし友人のお父さんの紹介という事もあって、値段を理由に断るのも嫌だったし、他の弁護士を探すのも面倒だったので、高いのは仕方ないなという事でこのままお任せしようと決めました。

その後2回目の相談に行った時には、1時間半ぐらいこちらの悩みとかをまとめてガッツリ相談して、そしたらその場で契約書を作ってくれました。

結果としては費用がすごく安く済んだ上に、その方の能力が高くて、僕が話をしている間に契約書を作り上げたりしていました。

本来弁護士費用とかは弁護士が処理にかかる時間に合わせて、例えば2週間かかるから何十万ですといった風に金額を提示してくるんです。

でも、その方は相談の段階でもう処理を終わらせてくれた上に、知り合いの紹介という事で安くして下さったので、合計としては相談料も全て込みで20万円いくかいかないかぐらいで済みました。

最初の鈴鹿の方は50万円ぐらいかかると言われていたので、半額以下で済んだのでとても助かりました。

弁護士以外の部分でも実は意外とかかっていまして、全員無料では相談に乗ってはくれませんし、相談自体は無料であっても交通費や接待費などが馬鹿にならないくらいかかりました。

僕の方から別れようと言ったので、相談や手続きといった作業や手間は僕が負っていました。2人で動いてもややこしくなるので、僕がかなりの時間を割いてやっていました。それもあって、仕事は殆ど出来る状態ではありませんでした。

それぞれの道へ

会社の財産分与で困ったところはどこでしょうか?

やはりサイトですね。サイトが複雑に絡み合っている状態だったので、絡み合っている状態のものをどういう風に価値付けしていくかという点でとても困りました。

それ以外に関しても、机とかの社内の器物についても本来は1つ1つ単価を出していかなければならなかったのですが、あまりにも面倒だったので、買い取ってもらって得たお金を分ける事にしました。

諸経費等を除いて余ったお金を分けた方が、全て金額で分けられるので物よりは分かりやすいだろうという事で、会社を続ける為の一部のもの、まあ安い机とかですけど、それらを除いてテレビや冷蔵庫などのお金になりそうなものは一括で買い取ってもらいました。

友人とは、今はもう別れてから3年近くになると思うんですけども、正直別れた直後はぎこちなかったですね。

僕がサイトの管理を全てやっていたので、それらの現状報告とかを淡々としていました。そういったサイトなどの整理報告の為、半年ぐらいはちょこちょこ会ってはいたんですけど、会うときは前のような親しい関係ではありませんでした。

それから2年ぐらい経ってから1度お酒を飲む機会があって、その時はお互いにしゃべれるようにはなっていたのですが、それぞれ別の人との付き合いがあって、僕自身も東京の方に引っ越していてそちらでの付き合いが多くなっていました。

東京の人と会うのと鈴鹿の人と会うのでは、地域性といいますか考え方の違いというのがありまして、けんかではありませんが、そこで話が合わなくなっている事を感じました。

くだけた話は出来るようになっていましたが、彼は彼で仕事を立ち上げて忙しそうだったので、遊びに行ったりする事は無くなりました。その後も数ヶ月に1回とかでたまにちょこちょこ会うというぐらいです。

友人関係は変わらないけど、お互いの仕事が忙しいからそんなに会えなくなってるという感じですね。僕自身が東京に引っ越したという事と、仕事の付き合いとか、やっている仕事内容も全然別のものになってしまったという事ですね。

同じウェブ系なんですが、彼はHP作成系の仕事で、僕は僕でまた違う自社メディアの作成に力を入れているという違いもあって、あんまり会わないようになりました。

何か協力できる内容があったら別に頼んでも良かったんですが、お互いに内容が違っているので中々そういう事も出来ないんです。

起業当初は毎日が楽しかった

最も楽しかった思い出、最も辛かった思い出について教えて下さい。

やはり起業当初は楽しかったですね。起業時はほんとに夢いっぱいというか、これから僕等はどうなるのか、売上はどれだけ伸びるのかと、明るい未来を想像していましたね。

その時はお互い夢を語り合ったし、スタッフ皆でお酒を飲みに行ったりとかして、楽しかったですね。

あのまま売上とかが順調だったらすごく楽しいままだったんでしょうけども、正直あの時の未熟な自分達のまんまで売上が伸びるなんていうのは夢物語で、絶対に無いなと言い切れます。

やはりあの時は夢見心地でフワフワしていたんだなとは思うんですが、本当に会社を立ち上げた時は楽しかったですね。

自分1人でのし上がっていくよりも2人でのし上がった方が楽しいみたいな感じで、共同経営だからこそより楽しみがあったという感じでしたね。

準備とかでやる事はたくさんありましたが、色々な手続きや作業なども面倒だと思いながらも、それらを含めて1番楽しかったですね。

最も辛かった思い出は、売上が急に激減した時ですね。その時初めて現実というか、自分達が今までたまたま上手くいっていただけなんだなという事を思い知らされる訳です。

けど、僕等にはそういう落ちるという経験というかイメージ自体が無かったもので、それが急激に落ちていったものですからパニックになって、本当に辛かったですね。

僕的には当時結婚したばかりで、家族と会社の両方を守っていかなければならないというプレッシャーは半端じゃなかったです。

もう1つは、僕が元々ぐうたらな生活をしていたので、親とかと仲が悪かったんです。特に父親とは何年もしゃべった事が無いというような状況だったのですが、会社をやるという事で親もすごく喜んでくれて、その後仲良くなったんですよ。

ですから売上が落ちた時、その3つ全てを一気に失うかもしれないという恐怖ですね。さらに友人と共同経営をしていたので、その友人も失う事になるのではないかという事も加わって、さらに恐怖が増していきましたね。

そうならないように頑張って働くんですけど、行き当たりばったりに働くものですから空回りで上手くいかなかったり、お金を失っていってどんどん辛い環境に追い込まれたりしていきました。

嫁さんとかに「もうすぐ会社が潰れるかもしれない」と初めて告白した時とかが辛かったですね。

その時は毎晩夜遅くまで働いても、脂汗をかいて眠る事が出来なくなってしまっていて、アルコールの強いお酒を飲まないと眠れなくなってしまったんです。

まあそのおかげで家飲みをするようになったんですけど、そういう風にしてやっていた時は本当に辛かったです。

友人と別れる時も辛かったですが、この時は自分だけのせいにしたくなくて、友人やスタッフなど周りにも当り散らしたりして迷惑をかけましたし、自分も嫌悪感にさいなまれたりして、結構そういう事があって辛かったですね。

共同経営のメリット・デメリット

共同経営のメリットとデメリットについて教えて下さい。

共同経営で上手くいってるパターンとかが僕の周りにもあるんですけど、それを見ているとお互いが全く違うジャンルが得意である事がメリットになっているケースが多いです。

それによって相乗効果がもたらされるというのがベストなのかなと思いますね。

経営していく上ではやはり社員を育てる事が難しくて、よく社員に経営者意識を持てと言いますけども、実際に社員がそれを持ってるかというと多分そんな事は無いと思うんですよね。それで悩んでいる会社も多いです。

経営者的に言ってしまったら、完全に動いてくれる社員がもう1人いるみたいな感じなので、共同経営のメリットとしてはやはり最初から右腕がいる状態っていうのが強みにもなります。

自分が病気や怪我で動けない時も、ワンマンだったらそれだけで倒産といった経営の危機になるのが、共同経営であれば片方の人が踏ん張る事で何とかなるという点もメリットだと思います。

ですが1番のメリットは、例えば片方のAさんは営業がすごく得意でありBさんはプログラムが得意であるという場合に、その2人が組んだりすると営業と生産の分野が1度に揃って一気にうまくいくという事だと思います。

お互いに全く違う分野なのでお互いに口出ししないというルールで、尚且つ一流の人間同士で組むといいと思いますね。お互いが中途半端な状態で組んでも多分ダメですね。

でも、はっきり言ってデメリットの方が大きいと思います。やっぱり「船頭多くして船進まず」ですね。2人も経営者がいるとお互いの考え方や理念の問題から、スタッフや取引先の相手が混乱してしまう事があります。

それから何事も2人で決めていかなければならないので、1つ1つの物事のスピード感が落ちるというデメリットがあります。

大企業とかも、上層部が厚くて提案1つにしても上へ上へ通していかなければならず時間がかかるという事があるんです。

大企業ならまだしも、小さい会社であればあっという間にキャッシュフローが悪くなってお金が持たなくなっちゃうんで、そういう意味ではデメリットが大きいかなと思います。

今回のように友人同士での共同経営の場合だと、もう友人としてはいられなくなるという覚悟が必要だと思います。

少なくとも前と同じ関係では絶対いられないと思った方がいいです。僕が知っている限りで共同経営で今でも友人関係を保っているのは、1社しか知りません。その1社が例外という感じで、それ以外の話を聞いた事はありません。

どんなに仲がいい人たちが組んでも、ある程度ビジネスライクといいますか、長時間経営の事で顔を合わせていかなければならないので、それが嫌になっちゃうとか、仕事以外で一切連絡を取らなくなっちゃうとかそういう事になってしまいます。

どうやっても友人は失うと思っていた方がいいと思います。最も、仕事上の面では強い絆が生まれる場合もあるかもしれません。

後は、株とか資産の分け方は失敗しないようにするべきです。

半々とかにしていると、資産分与で揉めた時にどっちの意見も通さなければならなくなってしまいますから、51%、49%にするだけでそれが解消されるので、絶対にそうすべきだと思います。

プロジェクト単位での協力ならアリ

また共同経営をしたいと思う事はありますか?

全く無いですね。僕の中では、メリットの話もしましたが、やっぱりデメリットの方が多いかなと思うのです。

特に人間関係の面で揉める事が圧倒的に多いので、友人や家族との経営に関してはきついなと思うので、共同経営でしたいという事はありません。

ただ、プロジェクト単位とかで動きたいというのはあります。

例えばA社とB社があって、うちがA社だとしたら友人のB社にこのプロジェクトだけとかこのイベントだけとか一緒にやりませんかという、部分的にやるという事は有りかなと思っていますし、今でも実際にやってるケースがあります。

うちがサービスを提供して、そのサービスを相手のお客さんに売ってもらうという形で、2人で1つのサービスを提供するというか、1つのサービスを2つの会社で運営するという事はありだと思っています。

機会があれば、まあ信用の置ける会社ときちんと契約書などの書類を交わしてやる形にはなると思いますが、そういう部分単位での短期的な共同プロジェクトなら、これからもやっていきたいと思っています。

ですから共同で会社を経営する必要は、僕としては全く無いと思っています。

後は子会社として作る事は考えています。例えば成果が出せると判断した事業については共同経営ではなくて、うちの会社から子会社へ出資してうちは支援を行なうという形の方がいいと思うし、実際にこのような形での経営は良く見かけます。

こうしたホールディングス化はうまくいっているケースが多いですね。株式のホールディングス化をして、下の子会社を経営者として事業を任せるという事ですね。

一つの会社を二人で共同経営するのではなく、あくまで一つの会社を一人の経営者に委ねて、グループ会社としてそれを自分が統括するという形の方がうまくいくと思います。

親族との共同経営とかもやめた方がいいですね。共同経営に限らず例えば社員が親族というのも、実際に悩んでいる方が多いのでやめた方がいいと思います。

役員報酬を奥さんに払うという程度ならよくある事ですしまだいいとは思いますが、普通に社員として家族を会社内で働かせるという事では、やはり苦労しているところが多いですね。

社員である家族自身がクビになる事が無いという安心感からなのか仕事の手を抜いたりとか、偉いのは社長なのに親族である自分まで偉いように勘違いして増長する人も多いんです。

家族であれば社長を今まで育てたのは自分だと思い込んで変にプライドが高くなったりして、実際の業務は大した事していないのに他の社員に干渉したりしてトラブルの基になるケースがよくあります。

家族経営の場合は、他人がその経営の中に入ってこられなくなる環境が出来てしまう恐れがあるんです。家族が皆優秀かと言えばそうではありませんし、最大の問題は家族を会社に入れてしまうと解雇しにくくなることです。

会社に全く貢献していない社員は辞めてもらわなければならないのですが、家族や親族だとそれもやりにくいので、経営の危機に陥ってしまう可能性があります。

だから家族や親族との会社経営はやらない方がいいと思います。唯一例外があるとすれば、3人の家族、父と母と息子だけで伝統工芸とか飲食店みたいな仕事をするというケースなら別に問題は無いと思います。

難しいですよね。そもそも共同経営は妥協や気遣いが多くて自分の思うように行動しにくい側面があるのですが、家族や親族はそういった要素が強まるのでさらに苦労すると思います。

共同経営をうまくやるには上下関係をはっきりさせる

どうすれば共同経営はうまくいくと思いますか?

共同経営でうまくいくケースは僕の周りでいくつかあるんですが、初めての会社を1から共同経営せず、お互いに2つ目の会社で共同経営するケースは結構うまくいっていますね。

これは最初から完全に上下関係を決める事が重要ですね。僕のように友人と始めるというのは最初多いケースなんですが、うまくいっているところは完全に上下関係が成立しています。

たとえ同じ歳で高校とかからの友人であっても、トップはトップ、下は下という感じで上下関係がはっきりしていて、それをお互いが意識しているから社員の前では敬語を使ったり社長と呼んだりして、きちんとけじめを付けています。

ただこうなると、共同経営とは少し離れているような感じもします。

どうしても共同経営でやりたいという場合、うまくいっているところは、各自が今まで全く別で会社をやってきて会社経営の苦労がよく分かっている上で、新しくもう1個会社を作ろうかという事で別の会社を作って、その経営を共同でやるという形を取っている事が多いです。

元々A社とB社と2つの会社があってそれぞれの社長であるA社長とB社長が共同でC社という新しい会社を作って共同経営するという事であれば、2人とも経営のノウハウや苦労を知っているので、最初から1つの会社を共同経営するよりははるかにうまくいくと思います。

後は経営者の年齢差がある場合は割とうまくいっているようです。年齢差があるとお互いを立てることが出来るようになります。

たとえ若い経営者の能力が高かったとしても、年齢差がある場合は年配の経営者はさらに成長させていこうと考えるし、若い方もよほどの場合で無い限り年長者への敬意を持って接するでしょう。

自然と上下関係が出来るというか、お互いを尊敬しあえる関係になる可能性があるという事ですね。とにかく上下関係をはっきりさせる事です。船頭は誰なのかをきちんと決めておく事が重要なポイントです。

まずは共同経営じゃなければいけないのかという事を見直して欲しいですね。共同である必要があるのかどうか、もう1度よく考えた方がいいと思います。

それから株などの資産の分け方は思いっきり差を付けた方がいいと思います。7:3とか8:2とか、理想は10:0でしょうね。

友人だろうが家族だろうが上下関係を作っておいて、下の方は社員としていつでもクビに出来るようにしておいた方が1番いいと思います。

2人で経営する必要があるのかどうか、各自に能力があるなら各自で会社を立ち上げるべきではないのかと思います。

それでも共同経営をしたいというのなら上下関係をはっきり決めておく事と、後は友人関係や家族、親族関係を失う覚悟は決めた方がいいですね。実際に顔合わせる機会が圧倒的に多くなります。

特に最初の起業時は夜中まで顔を合わせる事になるので、休みの日にまで会いたいとは絶対に思わなくなります。それでも友人関係を維持出来たとしたら、その共同経営は相当うまくいっているという事になります。

後は最初にきちんとしたルールを決めておく事です。共同経営であっても決めたルールに関しては絶対に逆らわないというルール決めをとにかく徹底させるつもりで作りこむ必要があります。例外とか特例を作り出したら終わりです。

そういう余計な事まで考える必要があるので、無理に共同経営をする必要は無いかなという気がします。どういう形であれ、2人とも同じ立場ではなく、どちらかが下になる覚悟はしておくべきです。

どちらが下になるかは別に能力とかは関係無く絶対に必要な要素だと思います。

別に1つのプロジェクトを2人でやるにしても、それぞれ別の会社を立ち上げてそこで同じプロジェクトを推進していけばいいと思います。

会社の立ち上げが大変だと思われがちですが、今なら別に株式0でも立ち上げる事は出来るし、出来れば自分のお金は自分で管理、運営したいでしょうからその方がいいんじゃないでしょうか。

これならお互いがいい相談相手となって気を遣う必要が少なくていいし、最初から分かれているので万が一どちらかが辞めようと思えば残った会社がやればいいという事で済みます。無理に1つの会社を2人で運営する必要は無いと思います。

上下関係をはっきりさせる事と、そもそも共同経営の必要があるのかどうかもう1度考え直す事が大事だと思いますね。